神保町の古書店 @ワンダーのブログ
神田神保町の古書店、アットワンダーです。SF・ミステリ・映画関連品ほか、買取歓迎! 古書探求をお楽しみの後は、2階に併設のブックカフェ二十世紀で珈琲をどうぞ。
20170912345678910111213141516171819202122232425262728293031201711
引き続きましてエリスンのご紹介です。
とは言いましても、1の方であらかたの情報は出し尽くした感があります。
というわけで、こちらでは1ではご紹介しきれなかった作品を
carSFhowks.jpg
R・シルヴァーバーグ他編『世界カーSF傑作選』講談社文庫 昭和56年発行
ウォルハイム&カー編『ホークスビル収容所 ワールズ・ベスト1968』ハヤカワ文庫SF 昭和55年発行

『世界カーSF傑作選』は車をテーマにしたSFを集めたアンソロジーです。
車でエリスンと来れば「101号線の決闘」というわけで、この作品集では大トリを飾っています。
ラファティ「田園の女王」、ハリー(ハリイ)・ハリスン「世界一の名車」など珍しい作品も収録されております。

『ホークスビル収容所』はワールズ・ベスト1968の副題の通り、各年の中短編の際立った作品を収録したアンソロジーです。
ウォルハイム&カーの「年刊ベストSF」アンソロジーとして知られるこちらは、本邦では65年の『時のはざま』から68年の『ホークスビル収容所』までが刊行されております。
こちらの作品は『死の鳥』に収録されるまで、先にご紹介した『海外SF大賞傑作選2』と同様に「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」を読むことができた、数少ないアンソロジーでした。
本書にはディレイニーの「ドリフトグラス」、ラファティ「いなかった男」なども収録されております。

waralt.jpg
ホールドマン編『SF戦争10のスタイル』講談社文庫 昭和54年発行
ファーマン&マルツバーグ編『究極のSF-13の解答-』創元推理文庫 昭和55年発行

『SF戦争10のスタイル』の編者、ホールドマンといえばヒューゴー、ネビュラ両賞に輝いた『終わりなき戦い』で知られ、ベトナム戦争での従軍経験がある人物でもあるため、戦争にまつわるSFを集めた本作に携わったのもそうした背景を踏まえてのことだったようです。
ベトナム戦争が終結したばかりという時代的なものもあり、戦争や人類の未来についての悲観的な作品が多く見受けられます。
こちらにはエリスンの「バシリスク」が収録されています。悲惨な戦場で心身に傷を負った帰還兵が戻った故郷で冷遇を受けて…という話の筋は後の映画『ランボー』に通じるものを感じます。
現在のところ「バシリスク」が読めるのは本書と、掲載されたSFマガジンのバックナンバーしかないようです。

『究極のSF』は当時の一流のSF作家たちにファーストコンタクト、不死、ロボット、タイム・トラベルなどなど12のテーマをそれぞれに担当させた13作品を収録したアンソロジーです。
これらの中からエリスンの担当したのは“未来のセックス”。12のテーマなのに13作品という不一致の理由がこのテーマで、ジョアンナ・ラス「わたしは古い女」もまた“未来のセックス”のテーマで収録されています。どうやら、男女それぞれの視点からということのようです。
エリスンの課題作「キャットマン」は、人間と機械という組み合わせで正面からテーマに取り組んだ作品です。
さて、このアンソロジーの面白いところに、それぞれのテーマ担当者のあとがき+おまけがあります。そこでは編者からのリクエストでそれぞれの作者に (a)担当テーマの古典と思われるもの (b)今回の作品を書く上で影響を受けたもの (c)最低1編の自作を含んだリストを上げることが課されています。
エリスンの場合ですと、ファーマー『恋人たち』、ル=グウィン『闇の左手』、自作からは「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」などを上げています。一流のSF作家たちが同業者のどんな作品を挙げているのか確かめてみるのも一興かと。
他にも珍しいところでは“ホロコーストの後”というテーマで「けむりは永遠に」(※)を寄せたティプトリー自身のあとがき(!)があります。この作品が発表された当時はまだティプトリーショック以前だったものですから、なんとなくその語り口に男性を感じさせるものがあり、シルヴァーバーグに送っていた手紙もこんな調子だったのかもしれないと想像するのはなかなかに愉快です。翻訳も(邦訳刊行はショック後)それを意識してか男性調となっていて妙に嬉しくなってしまいました。
 ※ ハヤカワ文庫版では「煙は永遠にたちのぼって」『老いたる霊長類の星への賛歌』収録

galaxyge.jpg
フレデリック・ポール他編『ギャラクシー上・下』創元推理文庫 1987年発行
こちらはアメリカのSF雑誌『ギャラクシー』こと“Galaxy Science Fiction”の創刊30周年を記念して刊行されたアンソロジーとなっています。
【海外SF】 〈ギャラクシー〉の栄光
詳しいところはリンク先の以前に取り上げた記事に譲るとしまして、下巻にエリスンの「冷たい友達」が収録されています。
こちらも現在までのところ、他での収録の無い作品となっています。エリスンの子供時代とハイスクール時代の思い出を下敷きに、すでに終わったと思われる世界を舞台にした短編作品です。エリスン自身の言によれば、SFワークショップで出会ったギャラクシー誌の編集者の頼みを断りきれず、ワークショップ参加中にわずか3時間で書き上げた作品とのことです。
寄稿した他の作家がギャラクシー誌にまつわる感謝や賞賛の思い出を語る中、引き受ける際に念押しした“原稿に一字一句手を加えない”という条件を破った編集者にそのことを“丁重に示唆”し、印刷所のゲラを押さえて直させたエピソードを持ってくるあたりが実にエリスンぽいです。

houkisou.jpg
『SF宝石』1981年6月号
『奇想天外』1976年11月号


『SF宝石』1981年6月号にはエリスンの14頁ほどのインタビュー記事が掲載されています。
エリスンの姿と彼の自宅の写真も載っており、ドラマや映画のシナリオで多忙を極め、また稼いでもいたといわれるエリスンの暮らしぶりが見れる貴重なものとなってます。
エリスンのインタビューからは、彼のカリスマ的と言われる魅力の一端が伝わってきます。
打てば響くといった印象で、多彩なエピソードを交えた軽快な語り口でインタビューに答えるエリスンからは、彼の世に出回っている評判の幾つかは、なるほどこういうところから来てるのだろうなと思わせるものがあります。
詳しくご紹介したいところですが、すでに記事がだいぶ長くなってるのでここはワンフレーズだけピックアップ。
テレビの公開討論会に幾人かのゲストとともに招かれた席でのこと、「人生の目的とは何か」と問われ、先のゲストたちがその質問の厄介さに憤慨したり、韜晦したりする中

ぼくの番になったので、こう答えた。「人生の目的は、死の絶対性に立ち向かうことだ(to say no to death)」ってね。人間、それ以外に何ができる?
ぼくの隣りにいたゲストの老婦人が、これを聞いて、ぼくの頬にキスしてくれた。


これぞエリスン節。
なお、インタビューと同時に掲載された短編「ヒトラーの描いた薔薇」の邦訳は現在でもこちらでしか読むことができないようです。
ラジオの番組の放送中にリスナーからのリクエストを受けてタイプライターと辞書だけを傍らにおいて書き上げたという、これまた“らしい”逸話のある作品です。

『奇想天外』1976年11月号には、こちらもここでしか読むことのできない「最後の剥製」が掲載されています。エリスンがSF作家として飛躍を迎えたのは60年代の半ばからで、翻訳されている作品もそれ以降のものが中心になるのですが、こちらの「最後の剥製」は珍しく飛躍以前の1957年の作品となっています。
宇宙中の猛獣を狩り、腕利きのハンターとして名を馳せた一人の男が最後に残した剥製にまつわる短編です。
デビューして間もない時分にあたるので技巧はまだ研鑽の中にあり、あの文章から溢れてくるようなエネルギーも上手く作品に込めきれていない印象があります。しかし、エリスンの特徴と言える苦痛と暴力へのこだわりはこの作品にも見て取れます。

さて、記事2つに渡ってご紹介してきましたエリスンとその作品についてですが、脱線を交えつつだったので予定を大きく超えた長さになってしまいました。
エドガー賞を受賞した作品が収録されているハヤカワ・ミステリ文庫の『エドガー賞全集』や『新エドガー賞全集』ですとか、雑誌掲載のみの作品が『マンハント』のバックナンバーにあるだとか、エリスンとアシモフのエピソードは『アシモフ自伝』(早川書房)に、などなど、エリスンにまつわるものはまだまだあります。
新刊も、『死の鳥』に続いて近く国書刊行会からエリスンの短編集が刊行されるとの情報もあります。
エリスン・リブートともいうべき、この機会にエリスンの作品を改めて探索していくのも楽しいものです。

そうした探索で、神保町に足を運ばれた際には是非、当店@ワンダーにもお立ち寄り下さい!



SF、買います! 詳しくはこちらから!

蔵書の整理をお考えの皆様、
神保町の@ワンダーへぜひ一度お問合せください。


早川書房・東京創元社他、
各社から刊行された国内/海外SF作品全般
評論その他関連書籍ジュヴナイル
文庫/新書/叢書/単行本/雑誌、幅広く取り扱っております。

ハヤカワ文庫SF創元SF文庫サンリオSF文庫
スペースオペラ/ハードSF/ニューウェーブ、
ミリタリーSF/ユーモアSF/サイバーパンク/スチームパンクetc、
幻の名作から定番作品まで買い取り歓迎いたします!


その他、ミステリ・推理小説映画関連品アメコミ・海外コミック
幻想文学・ファンタジー怪奇小説・ホラーなどなど、
店頭へのお持込みはもちろん、出張買入・配送査定もご相談承ります!

買取相談フリーダイヤル 0120-154-727
メールでのご相談も承ります。 wonder@atwonder.co.jp
関連記事
スポンサーサイト
copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.