神保町の古書店 @ワンダーのブログ
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前回から引き続きのハヤカワ・SF・シリーズご紹介です。

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エドモンド・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』ハヤカワ・SF・シリーズ3296

「キャプテン・フューチャー」シリーズで後にその名を知られることになるハミルトンは、1926年の『ウィアード・テイルズ』誌に掲載された短編「マムルスの邪神」(The Monster-God of Mamurth)にて作家デビューを果たしました。
折しも『アメージング・ストーリーズ』や『アスタウンディング・ストーリーズ』などの草創期のSF雑誌が相次いで創刊されていたこの時代。ハミルトンは「星間パトロール」シリーズをはじめとする数多くのスペースオペラを発表しその地歩を確かなものとします。
作家としての活動の場はSFだけでなく、ミステリやアメコミのスーパーマンやバットマンの原作までこなす広い射程を持っていました。

今回ご紹介する短編集の表題ともなっている『フェッセンデンの宇宙』は1930年代に入りすでに一定の成功を収めていたハミルトンが、ある種の虚無感を作品の中に取り込み始めた頃の作品です。『フェッセンデンの宇宙』はSFにおける人工宇宙の代名詞的存在で、ハミルトンがここで注目した宇宙の入れ子構造という着想は、後に続く作品を多く生み出しました。
ここでは収録されている他の短編の中から幾つかに触れてみたいと思います。

『追放者』“Exile”
わずか7ページほどでありながら、この作品もまた見事な切れ味を見せてくれます。
SF作家が集った酒の席での話。一人が思わせぶりな一言から自分の体験談を語り始めます。与太話だと思っている仲間たちからの質問を切って落とす最後の一言が効果的です。

『ベムがいっぱい』“Wacky World”
ハミルトンの茶目っ気がかいま見える作品です。
世界で初めて火星に降り立った宇宙飛行士たちが見たものは、SF小説から抜け出てきたような大目玉の赤い火星人や触手のタコ型火星人たちだった。大気もあって気温も申し分ない。おまけに彼らの喋る言葉は英語ときてる。あまりに科学者の予想からかけ離れた火星の様子に面食らいながら彼らは火星人と友好的な接触を図るが……
地球人が書いたことが実現してしまうおかげで、ひどい目にあってきた火星人たちの怒りには、地球人として申し訳なくも大笑いしてしまいました。
“ときどき、科学的な正確さに固執するタイプの作家が現れて、きみたちの天文学者の主張する通り、火星を厳寒な土地にしてしてしまう。そこでわれわれは、凍死もしかねない状態に追い込まれるのじゃ!” (p145)
いやぁ申し訳ない。
これを書いたのが他でもないハミルトンというのが最高です。

『時の廊下』“The Inn Outside the World”
時空を超越した場所にあらゆる時代の賢人たちが一同に会すクラブが存在し、現在の危機を乗り切るために、そこの規則に反することは承知の上で知恵を借りるべく訪れた現代の賢人とうっかりついてきてしまった護衛の話。
こういった作品の偉人の錚々たる面子は楽しいものです。イクナートン、ソクラテス、孔子、シーザー、フランシス・ベーコン、ベンジャミン・フランクリン、アショーカ王…、彼らは禁止されている時代を超えた干渉に抵触するこの要請をどうすべきか議論します。
議論は紛糾し誰もが決めかねる中、ずっと沈黙していた遠未来からの参加者が口を開き……
彼の言葉はそこまでのコメディの気配を一変させ、膨大な時間に対峙するものの厳粛さすら感じさせます。
最後の場面の印象もさわやかな一品です。

『何が火星に?』“What's It Like Out There?”
こちらは『向こうはどんなところだい?』の題で河出書房新社の奇想コレクション版にも収録されております。
双方のタイトルから想像できるように、火星開拓から帰還した宇宙飛行士の話です。
事故や病気、開拓者の反乱などで散々な目にあってようやく地球に帰還した主人公は出会う人皆から聞かれます。「火星はどんなところでした?」と……
希望を与えるように、悲しませないように、求められる答えを返す主人公の心情がなんともやるせない作品です。

いずれもハミルトンの多面性とアイデアの豊かさが伺える作品たちです。
特に『ベムがいっぱい』の自分への皮肉とも取れる内容を笑いに昇華してみせた柔軟さはハミルトンの屈託のなさを感じられます。
スペースオペラでの成功があまりに印象強いせいで、忘れられがちなハミルトンのアイデアの素晴らしさや軽妙な語り口などがこれらの短編の中で存分に振るわれています。

ついつい紹介文が長くなってしまいました。
切れ味の良いアイデアと、軽妙な語り口が効いたハミルトンの名作短編集。
夏を迎えるこの時期におひとついかがでしょうか?




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