神保町の古書店 @ワンダーのブログ
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ハヤカワSFマガジンの最新号でハヤカワ・SF・シリーズの記念特集が組まれていましたが
縁ありましてハヤカワ・SF・シリーズのまとまった入荷がございました。
せっかくの機会という事で、そのうちからいくつかの作品のご紹介を。

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ストルガツキー兄弟『幽霊殺人』ハヤカワ・SF・シリーズ3316

以前、ご紹介時の記事はこちら
【海外SFご紹介】 ストルガツキー兄弟『幽霊殺人』!

ストルガツキー兄弟は兄アルカジイと弟ボリスの共作で、アルカジイが亡くなる1991年まで『ストーカー』『収容所惑星』など今もなお高い評価を受ける作品を世に送り出してきました。近年でも2013年に『神様はつらい』がアレクセイ・ゲルマン監督の手で『神々のたそがれ』とタイトルを変え映画化され話題となったことをご記憶の方もいらっしゃるかと思います。
活動時期が冷戦期ソビエト連邦の作家であるため、婉曲的な体制批判なども作中に多く、本国では発禁処分になった作品も少なくないと聞きます。政府批判や思想性の比較的薄いように思える本作にあっても本国では検閲を免れず、いくつかの語句を置き換えられるなどして出版されました。

この『幽霊殺人』はストルガツキー兄弟が新たな探偵小説を構築する試みとして構想された作品でした。
たしかに本作はSFシリーズよりはHPBがふさわしいようなミステリ的な、外部から隔絶された雪山の山荘、そこを訪れた休暇中の刑事、謎めいた宿泊者、そこで起きる不可解な殺人という要素が冒頭から散りばめられています。
しかし、それでもこれが銀背であるのは、ストルガツキー兄弟が試みた伝統的探偵小説からの飛躍がそのまま、この作品がハヤカワSFシリーズにて刊行されることになった理由となったからでしょう。
探偵小説にSF的要素を入れるという飛躍の成否については後に、弟のボリス・ストルガツキーが「アイデアは良かったがこの試みは失敗だった」と振り返っています。しかしながら、彼らの失敗の自覚とは別に本作の娯楽性は高く評価され、本邦のみならず世界各国で翻訳され好評を博しました。
この読者からの評価にはボリスも「大いに慰められた」と述懐しています。

この作品の妙味は、主人公の「正義」への懊悩にあります。「正義」に従い自分の取った行動で(直接ではないにしろ)結果的に起きることへの責任について、ストルガツキー兄弟が主人公に託して浮き彫りにしたものは本作にジャンルに縛られない普遍性を与えたと言えるかもしれません。

兄のアルカジイはモスクワの外語研究所で日本語を学びその後も軍で通訳、教師などを経たために日本語に堪能で、夏目漱石や芥川龍之介などの翻訳で日本文学をロシアに紹介した人物でもあります。
そうした翻訳者としてのアルカジイの手によって安部公房の『第四間氷期』のロシア語訳がなされました。

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安部公房『第四間氷期』ハヤカワ・SF・シリーズ3062
『第四間氷期』は日本初の本格長編SFと言われている作品です。
これ以前にも海野十三や押川春浪などSFに分類される作品は存在しましたが、冒険小説的な色彩が強かったこれら先行する作品に対し、こちらは科学を軸に人類の未来を描いたという点で確かにSFとしての立地を示した作品と言えます。

安部公房は三島由紀夫と並ぶ第二次戦後派の作家として国内外で高い評価を受け、『壁 - S・カルマ氏の犯罪』で芥川賞、『砂の女』で読売文学賞を受賞した時代を代表する一人として知られる大作家です。
その安部公房が、初期に著したSF作品のひとつがこの『第四間氷期』です。
未来を予測する電子計算機の開発と、それによって予想もしなかった未来を知ることになった人々が、その未来を巡る陰謀に翻弄される物語です……と言ってしまうと簡単なのですが、実際にはこの筋は中盤までで、そこから先は人類、あるいは未来そのものが主人公と言っていいかもしれません。
これについては巻末のあとがきにて、安部公房自身が「未来」というものの残酷さ日常的連続性からの断絶として有り様を語っています。



未来が、肯定的なものであるか、という議論はむかしからあった。また、肯定的な世界のイメージや、否定的な世界のイメージを、未来のかたちをとって表現した文学作品も多かった。
しかしぼくは、そのいずれもとらなかった。はたして現在に、未来の価値を判断する資格があるか、どうかすこぶる疑問だったからである。何らかの未来を、否定する資格が無いばかりか、肯定する資格もないと思ったからである。
真の未来は、おそらく、その価値判断をこえた、断絶の向こうに、「もの」のように現れるのだと思う。





こうした思索が反映された、ある種の無常観を帯びた作品となっています。

他の作品もご紹介したいところですが文量が多くなってまいりましたのでひとまずはここまでとさせていただきます。
今回は、翻訳で縁のあった2つの作品のご紹介ということでひとまず。




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